超低空のダンディズム
今日はお仕事何時頃に終わりますか?
と瘋癲さんからショートメールが来た
返信したら
そちらに、一緒に行く?
というテキストが来た。
嬉しかった。
途中の駅で待ち合わせて、一緒に私の家に行った。
寝る時に朗読してちょうだい
とお願いした。冷蔵庫にあるもので軽くご飯を作って、テレビを見ながらお喋りをしたり、記憶から絵を描いたりした。
寝る段に、枕元のスタンドをつけて、瘋癲さんが朗読を始めた。
瘋癲さんは歌うようにゆったり話すのに、朗読の声はかたく、響きが悪くなる。いつもの声で読めばいいのにな。
長々と読む。いつまでも読む。
あんまり長いので、途中で私が読んだ。
女と竹七がデートに行くところで、ページの残りは少なかった。
私が読み出すと、彼は折り曲げた腕に乗せてゆっくりと身体を横たえ、文章が読点に止まるたび、うん、うんとうなづきながら、楽し気に聞いていた。
最後の解説に澁澤龍彦の素晴らしい一文があった。
超低空飛行のダンディズム。
澁澤龍彦。流石。
瘋癲さんは貧しくないと良い作品が出来ないと考えているので、頑なに貧しさの中に立ち続けて、自分を貧乏だと言う。
その割に自炊はせず、コンビニエンスストアを多用している。ビールを買うときは迷わず恵比寿を選ぶ。コーヒーはカフェで楽しんでいる。
私は本当にお金が無い生活を知っている。本当に本当にお金が無くなったら、コンビニも、カフェも行けない。高いから。
彼の貧乏は趣味というか、生き方のモデルなんだろうなと思う。
おやすみなさい。