終わったんだな、これは
9月末に瘋癲さんから連絡があった
仕事終わりに餃子でもどうですか
これ最後になるかもな、と思った。
特に会いたい気持ちも無くなっていたけど、会いに行った。
餃子屋さんを調べてみたらやすみで、
銭湯もやすみだった
瘋癲さんらしい
一番最初にご飯を食べた小汚い中華に入って、ご飯を食べた。
瘋癲さんは研究と創作の海に入ってしまった。その海は宇宙に繋がっていて、彼は宇宙に透明な眼球を二つ浮かべて、満たされているのだった。
彼の話を純粋に面白く聞いた
言ってることが、とてもよくわかった
最初の食事のお店で、最後も食事する
最初の食事のときも、研究の話を聞いたな。
わたし、よく覚えてる
よく覚えてます
その後二人で人混みを歩いたとき、あなたはめずらしく
ねえ
と話しかけてきて、私が顔をあげたら、
いま幸せかい?
と聞いてきたのだった
暗い海に潜って
月を見上げたり、宇宙に行ったり。
布団で身体を撫でられているうち、セックスが始まった。仰向けになったとき、薄く目を開けて、青みがかった光に照らされた瘋癲さんを見た。首を少し傾けて、私を見下ろしていた。
その後はもう思い出せない。
これが最後だろうなと思うと、しがみついていたいよりずっと、気持ちの薄いセックスになったのが不思議だった。
あなたからは本当に色々なことを教えてもらった。誰といるよりも新しいことを。
残念だけど瘋癲さんは、他の女性のように私を好いていなかったのではないかと思う。
誰にも紹介してもらえなかったし、あまり大切にもしてもらえなかった。旅行も行かなかったし、目に見えて私に使う時間を惜しがった。
本を3冊くれた。大きな手で沢山撫でてもらえた。ここから先はだめ、を徹底してくれた。僕を僕のままでいさせてくれという柔らかな気を常に纏っていた。
本当に、本当に、わたしの知りうる男性の中で一番自由で、一番素敵な人だった。
最後に会ってから1ヶ月半経った。やっぱり連絡は来ないし、私も連絡しない。
私も他の人と付き合う準備ができて、たぶん明日、その人と寝ることになると思う。
1年と9ヶ月。楽しかった。
誰よりも、都合の良い女で。
また、あなたが気が向いたときに声かけてください。
今までの通り、あなただけの都合で。