生活が駄目なら他の人へ

昨日珍しく、珍しく瘋癲さんから電話があった。

私の家の地域で仕事が終わり、

居酒屋で一人酒を楽しんでいるところだった。

陽気な声だった。

これから、そちらに行こうか?

 

瘋癲さんから電話があることも、行動の提案があることも、珍しい。

大至急掃除しました。

 

駅に迎えに行くと、瘋癲さんが

「誰かな」

と言いながら私の腰を引き寄せた。

私はそういった腕の使い方をする瘋癲さんが大好き。

 

買い物をして家に行き、瘋癲さんが焼きそばを3玉、ソースマシマシで作り、

私はなめこと豆腐の味噌汁を作った。

 

瘋癲さんがシャワーを浴びるとき、抱きしめられて首にキスをされ、

玄関前で身体を触り合ううち、立ったまま後ろから挿入された。

素敵だった。

 

寝るときにセックスをした。瘋癲さんの腕は私を立体的に扱う。

エストやヒップのまるみを何度も撫でるので、

私は彼といると、自分のスタイルが良いような錯覚を覚える。

 

終わった後も片手で私を抱き寄せて、身体中を撫でてくれる。

 

私はこのまま死なせてくれえという気持ちになる。

 

そのうち、元カノの話になった。

わんさわんさといる元カノの中で、初めて登場する人だった。

 

多分私の前の恋人だと思う。3年くらい付き合って、

「あなたの子供が欲しい」と言われて瘋癲さんが断り、連絡が途絶えたそうだ。

 

瘋癲さんはめずらしくはっきりと、

彼女のことは好きだったからね

と何度も言った。

 

彼女は他の人の子供を懐妊できたかな、

と聞いたら

 

そんなこと考えたくもない、彼女のことは好きだったからね。

 

 

僕はお金も無いし・・・・、と言ったら、

「お金のことは考えなくていいから」と言われたそうだ。

 

それでも断ったそうだ。

瘋癲さんは気づいていないかも知れないけど、これは後味が悪い。

お金の心配はしなくていいといったのに、断るなんで、これで根本の原因がお金じゃないことがわかってしまった。

それは傷つくよ、女性にとって。

僕は僕の望む形でしかあなたと居たくない、ってことだもの。

それって、結局、嗜好品だよ。

 

その時の彼女の苦虫を潰したような顔は忘れられない、いまでも覚えている、

と言っていた。そりゃそうでしょう、辛かったと思うわ、彼女さん。

 

そんなに好きな相手でも、結婚や契約は嫌だったらしい。

「穏やかな人でも、穏やかじゃなくなってしまうような環境になることは、よくあるからね」

 

猫の例えの話をしたら、

「僕はあなたをそんな猫のように思ってはいないよ」

と言ったけど、

 

でも、実際やっていることは、

 

「絶対に自分の家猫にしないよう注意しながら野良猫と接する猫好き」

 

と同じだと思う。

 

気が向くと撫でまくって可愛がっているけど、野良猫が病気になっていても、家には入れないし、病院にもつれていかない。

 

でも、猫が好きで、猫といると癒されるのだろう。

彼にとってはそれが「好き」なのだろう。

 

私は瘋癲さんの話を聞きながら、

彼の好きは私の好きとは根本的に違うんだな、としみじみ思った。

 

誰のことも助けない。

助ける用意もしていないし、するつもりもない。

 

瘋癲さんがドアを閉ざした自分本位な猫好きでいる限り、

私は家にいれてくれる、病院につれていってくれる、本物の猫好きを探さなきゃ駄目だと思った。

そして気軽に沢山撫でてくれる瘋癲さんちにも遊びに行けばいいんだと思った。

 

瘋癲さんは私との生活を望んでいないし、私と一緒の空間を持つ未来も望んでいない。

 

未来と生活を望まない人に、未来と生活を期待してはいけない。

 

未来と生活は別で探そう。本当にそう思った。

 

瘋癲さんは、私のことをいつか特別に思ってくれるのではないかと夢見ていた。

何度も、何度も、何度も、何度も。

 

でも、それはただの私の夢で、夢の中では生きられない。

瘋癲さんには何も言わずに、私は他の人を探そうと思った。

 

そんなことをしても、瘋癲さんは何も気づかないだろう。

 

野良猫好きは、目の前から猫がいなくなれば、あとはどこでどうしていようと全く関心が無いのだから。

 

おやすみなさい。