ファンタジー記録

こないだ瘋癲さんちに泊まったとき、嬉しいことを2つ、言われた。

 

風変わりな見た目のおじさんが一人でやってる飲み屋に入ったら、

「あんたたち、夫婦かい」

と聞かれ、

私は瘋癲さんの後ろで細かく頭を振った。

瘋癲さんは

「まあ、まあ、そんなものです」

と言った。

それが不思議だった。

 

多分、瘋癲さんに聞いたら、

こう言うだろう

「そう答えておかないと、後で色々と質問が、面倒臭くなるじゃない」

って。

 

家に帰っても不思議だった。

そして勝手に嬉しく思った。

まあ、こなれてる人なら、そう答えるよね。

私が馬鹿正直で、変わってるだけだ。

 

今思うと。

好きじゃない人とのほうが「夫婦ですよ」って言えるのかも。

私だったら、平気で言いそう。

まあ、いいや。

 

もうひとつ。

朝、私が動き出したら

「起きるの」

と瘋癲さんが言った。

瘋癲さんは私に早く出て行って欲しいのだ。

彼は一人のほうが、よく眠れるから。

「起きないよ」と言ってまた寝た。

トイレに行こうとすると

「起きるの」

と聞くから、黙ってトイレに行った。

戻ってくるとまた

「起きるの」

と聞くので

「もうあなたとは口をきかない」

「どうしてだい」

「私を追い出そうとするから」

とふざけたら

「そんなことないよ」

と言って一泊置いてから

「ずーっと、隣にいて欲しいと思ってるよ」

と言った。

それがあまりに適当な物言いなので

「棒読みなんだけど」

って言ったら瘋癲さんは笑った。

 

私が枕元のスマホを見たときに、また同じ会話をした。

 

家に帰ってから、思い出して、嬉しくなった。

 

面倒くさいから出てきた言葉。

適当にフォローするために出てきた言葉。

 

そんな言葉でも、私は嬉しい。

好きって、なんだろう。

あなたが大好き。

ずっとずっと一緒にいたい。

 

おやすみなさい。

 

 

感情を切り離して

身近な人の立ち振舞いに関して感動したことがあった。

 

感情を切り離して、現状が良くなるような行動だけを取り続ける。

 

瘋癲さんもそうしている。

 

だから私もそうすれば良いのではないかと思った。

 

悲しいことについては、考えない。

 

今を、今だけをもっと、切り出して、昇華させる。

 

好きな人と居られないことを悲しむより

今何をすれば私の、今の、この場が良くなるのか、

それだけを考える。

 

瘋癲さんもそうしている。

何してるんだろう、会いたいな

って思う人は、いるそうだ

 

でももう、仕方無いそうだ。

 

私も同じだ。

どうしようもないことは、考えない。

今、できることをする。

 

どんな手を使っても、あなたに、会いたい。

瘋癲さんに、会いたい。

 

 

 

 

 

 

 

好きってなんだろう

瘋癲さんの家に行った。

久々だった。

 

真夜中12時から歩いてお蕎麦を食べて、猛烈に変わってるおじさんが一人でやってる小さな酒場に入った。

 

雨の中二人で歩いて

瘋癲さんの部屋でシャワーを浴びた。

 

長いセックスが開始されたけど、瘋癲さんは珍しく酔っていて、射精できなかった。

 

彼はセックスに関しては驚異的な体力があるので、長く突かれて、膣が痛くなった。

 

朝、セックスをして、少し寝て、身支度をしている途中彼が

また、突きたくなった

と私を布団にいざなった。

 

一回ごとに骨に響くような重い突きは、

身体の芯に届いて、

私は悲しくなる。

 

後ろから入れるとき、どうしてお尻を叩くの

と聞いたら、

叩いてくれって言った女性がいたから

と言った。

 

叩子さんとは3年付き合って、彼女が他の人とお見合いすると言ったので、連絡を取らなくなったそうだ。

 

そこまで好きでもなさそうだった。

本当に好きになった女性に対しては、遠くまで会いに行ったり、するそうだ。

 

若かりし頃、シカゴまで行ったことがあるそうだ。

 

私のことは。

まあ、多分そこそこ好き、なのだろう。

 

何度も聞きたくなった。

聞きたくなった。

私のことはどのくらい好きですか。

 

でも聞かなかった。

はぐらかされるだけだから。

だから悲しかった。

 

これも一種の片恋だよな。

 

好きってなんだろう、って、友達と話したとき

彼女は

侵食するのを許すこと

と言った。

 

私の「好き」は

「好奇心の強度」に尽きる。

彼女と話してて、そう思った。

 

もっと知りたい。

私のことも知りたいと思って欲しい。

 

瘋癲さんとはその強度が全然合わない。

だからセックスするし、楽しいけど、片思いだ。

 

朝一緒にコーヒーを飲んだ。

いつまでも一緒にいたかった。

 

好きななる人と、うまくいかないな。

 

ほんとに、うまくいかないな。

 

お見合いの会社に登録した。

 

言いますけどね、本当は、

瘋癲さんと永遠の愛を誓い合いたいですよ。

あなたが大変なときは俺だってなんとかするよ

と言われたいですよ。

僕の故郷に一緒に行こうよ

あなた、父に会う?

って、言われたいですよ。

あなたは特別だからね

あなたとはなるべく長く居たい

って言われたい。

 

でも言われない。

 

だから仕方ない。

 

 

 

会いたいって、なんだろう?

会いたいって、結局なんだろう?

何が起きているんだろう?

 

30分だけでも会いたいっていうのは、話をしたいんだ。

触らない、話もしない30分だったらどうだろう。

 

ただ一瞬に歩くだけで嬉しいかも知れない。

 

「話すこと何もないけど?」

と言われて、

「いいよ!黙ってて」

と言えるほど強くない。

 

やっぱり

「あなたがいるのは、いいね」

ってムードの中に入りたいんだ。

 

あなたと時間を過ごすのは、いいね

 

いいね

ってのは

安らぎ

楽しさ

癒し

 

かな

 

力を抜きながら、わくわくできる。

 

今何してますか。

会いたいなあー。

 

よし、自分のことをしよう!

自分の中で見つけよう。

 

 

 

 

 

丸腰

私から会いたいと言うのを止めると

瘋癲さんから連絡が来るようになった。

 

恋愛本にもそうやって書いてある。

その通りになるんだな。

私の気持ちは変わらないのに、笑える。

 

ただ私は、邪魔そうにされるのが嫌だから、腹をくくっただけだ。

 

そんな訳で今日も瘋癲さんから連絡があって、瘋癲さんの仕事場の町まで夜ご飯を食べに行った。

 

私の職場から1時間かかった。

 

私たちは海の匂いが生ぬるく押し寄せる裏道で、安い居酒屋に入り、小さなゴキブリがフナムシかと思う数と自由度でカウンターをうろついているお店でご飯を食べた。

 

普通の女性ならアウトだし、虫が嫌いな人、または清潔好きな人もアウトだ。

 

でもゴキブリたちは注意深くカウンターの奥を歩き、私たちの邪魔をしなかった。私は虫を観察するのが好きなので、皿の下から現れた彼らが、大きく張られた触覚を細かく震わせながら左右に動く様子を見ていて飽きなかった。

 

普通の女性なら

「こんな店!あたし大丈夫にされてない!!」

って言うだろう。

 

私は、別に良い。

瘋癲さんと話が出来れば良い。

会話が聞き取れるくらいの店なら。

 

大事にされてなくても良い。

こうしてたくさんお話しできるなら。

 

今回で会えなくなるかもって思いながら会う。

 

明日仕事があるから、今日はあなたの家には行けないけど、と最初から鍵を刺してきた瘋癲さんが、

「明日僕を10時に起こしてよ」

と言った。

「??電話で?」

「あなたの家で」

「明日仕事があるんでしょう、帰りなさい」

 

瘋癲さんは以前私と楽しく時間を過ごしていたら、仕事先の約束をすっぽかしてしまったことがある。

 

またそんなことにはしなくなかった。

 

あなたの家に帰りなさい。

よく、言えましたね、わたし。

 

あっさりと駅で別れてきた。

わたし、振り返らない。

 

着いただの、楽しかっただの、メールもしない。

 

瘋癲さんとはそのくらいじゃないと、溺れてしまう。

好きだから。

 

わたしの

好き

は。

重いんです。

 

あなたの負担にならないように

極限まで間引きしながら。

 

おやすみなさい。

 

 

 

 

二択、ただの二択、やむを得ない二択

昨日クリムト展に行って、クリムトが次々モデルと関係を持ち私生児が14人いたというくだりに驚愕し、そこから瘋癲さんの元恋人について考え続けてます。

 

元カノさんは、瘋癲さんとの愛が深まって、自分の年齢も差し迫って来て、彼との子供が欲しくなった。

 

瘋癲さんは穏やかで、誰にも指図しない。稼ぐ気が皆無の彼だけど、お金さえなんとかなれば、生活はできる。彼女の安定した稼ぎだったら、子供も育てられる。

 

一緒にいて平和で、楽しくて、大好きな彼と、一生暮らしたかったのだろう。

 

そして瘋癲さんが徐々に愛を寄せてくる様子を見て、今の私たちの関係なら彼も決意してくれるのではないかとありがちなファンタジーを描いてしまったのだろう。

 

どの女でも駄目だった。この女に出会うまでは。

 

この物語は真面目すぎる女性のファンタジーだ。

 

ファンタジー

 

なんだか自分が断られたみたいに残念だ。

 

未来を固定する契約を結べる別の男性を探すか、

 

瘋癲さんの望む通り、恋人の関係を続けるか、

 

あともう一つある、

瘋癲さんの気が変わるのを信じるか。

 

最後の一択はリスクが高い。

冷静な人なら二択に尽きる。

時間が無いなら尚更だ。

 

彼女は他の男性を探す決意をして、別れの言葉無く瘋癲さんと連絡を絶った。

 

愛してた人を、自分の人生のために切り離していく。

 

私からすると、ちょっと信じられない。

 

私が15年も暮らした元彼と別れたのは、ロング二股がわかって、本当にどうでも良くなってしまったからだ。

 

彼女も瘋癲さんの対応を見て、一気に覚めてしまったのかもしれない。

 

この人、適当に優しいだけだったんだ。

 

私のことは、どうでも良かったんだ、誰でも良いんじゃない。何よそれ。

 

そうわかってしまったのかも。

 

でも瘋癲さんも同じだ、呑んでくれなければ別れるという最後の欲求を断るって、凄い。

 

皆、しっかりしてる。

本当にしっかりしてる。

 

人生の目的がはっきりしてる。

 

私の人生の目的って、なんだろう。

 

フーム、考えちゃう。

 

でも瘋癲さんは素敵だと思う。

素敵だし、偉いと思う。

 

次回はもう会えないかも、って思いながら、会うようになった。

 

彼は私との連続した時間を望まない。

 

いいんだ、それで。

いつ終わっても良いように、もっと良い時間に。

 

本当に、あなたが大好き。

 

 

 

しばしの我慢

瘋癲さんが居なくなると、寂しいな。

 

でもこの寂しさはヤマがあるから、ヤマを越えれば、大丈夫。しばしの我慢じゃ

 

10年以上不倫をしているお客様(50代女性)が面白いことを言っていた。

 

会えなくて会えなくて寂しくて、でも一生懸命自分の生活を一人で満たしていったら、月1度くらいの逢瀬で我慢できるようになった。

今は月に1度会えないときもあるけど平気になった。ママと同居するようになって、日常の寂しさが無くなったからだと思う。ママが死んだらまた寂しくなっちゃうのかも知れないけど。

 

誰かと同居することで人恋しさが半減するんだ。

そんなもんなのかな。

 

瘋癲さんのモトカノの話はかなり引っかかった。

そして思った。

そんなに好きな彼女さんだったら、うまく立ちまわれば、

「そうだねえ、そのうち考えるかあ」とかなんとか言いながら、上手にごまかしながら付き合えたかも知れないのに。

 

そこまで考えて気がついた。

それ、私の元彼じゃない。笑

「同居して2,3年で籍を入れますから」って両親にも挨拶に来て

結局15年引っ張って、ロング二股が発覚したんだ。

 

だからやっぱり瘋癲さんは偉い。

嘘をつかないところが偉い。

 

元カノが休暇で旅行に行くときに

「旅行から帰るのは○日だけど、色々やることがあって2.3日連絡取れないから」

と連絡が来たとき、瘋癲さんには彼女の気持ちが透けて見えて

「もう僕とは連絡を絶つんだな」

とわかったそうだ。

そのまま彼女から連絡が途絶えて、瘋癲さんも連絡しなかったそうだ。

 

よく我慢できるなあ・・・・

「世の中はうまくいかないよ」

と瘋癲さんは寝ながら言った。

 

「彼女は付き合うときに子供は要らないって言ってたのになあ」

 

残念だったね。

 

瘋癲さんの「すき」は、小学生くらいの「好き」かな。

親が引っ越したら、もう終わりなんだ。

 

不思議な「好き」だな

綺麗な「好き」だな

 

おやすみなさい。