知人の死
元同僚が癌で亡くなったというメールが来た。
ひとつ年上の女性だ。
苦手な人だった。
今思い返すと、年下の女性には優しかった。
ひとつ年下で、後から職場に入った私には、優しかった。
彼女は、チーム内の予算の流れや淀みや上乗せやピンはねを良く知っていて、かなり上手に上司を使った。
お金を自由にできたり、どこからか賄賂的なお金を常にもらっているような上司から、日常的に何かを買ってもらい、それを隠さず自慢していた。
家具や家電だけでも、彼女が自慢し、また上司が「買ってやったぞ」というものの数はちょっと常識では考えられない頻度と量だった。
そして彼女は、「あいつはバカだから使えないのよね」的な発言を色々な人に対してしていた。
出入り先の業者さんや、上司や、社長、部下、男性社員、恐らく彼女に関わったスタッフの8割以上が影で彼女に「使えない認定」を受けていたと思う。
彼女は堂々としていたので、誰も、何も言わなかった。
それが30前半だった。ひとつ違いだと聞いて驚いた。その態度と貫禄から、40前後だと思っていたのだ。
そんな彼女が癌で亡くなった。
彼女と一緒だったチームが解散してから一度も会っていなかったので、はっきり言って生きていようが死んでいようが私の生活にはなんの関わりも無いのだが、それでも、もの言わなくなった彼女について考えざるを得なかった。
あんなにモノの無心をしていたなんて、本当は寂しかったのではないか。どこまで自分のわがままが通るのか、実験していたのではないだろうか。
さも世の中の金はあたしがまわしてるんだから、というように、「そんなことよく言えるな」というくらいの憎まれ口を叩いていたあの人が、黄色くしなびて息をしなくなってしまったとは、とても考えられない。
Kさん、あなたの死であなたに関係した私たちは皆揺れている。
でもあなたはやっと体を抜けて、「あたし、今全然ラクだから〜、あー死ねて良かったあ〜」なんて言ってるのではないかと思う。
ご両親の悲しみはいかばかりかと思うが、あなたにとっては良かったのではないかと思う。
まあ、あなたのやってきた行為がそっちの世界でどう解釈されたのか、それが気掛かりではあります。
今思うと、あなたは正直だった。
良かったら愚かな私たちにも、あなたの正直さをおしえてください。さようならをいう気にならない。そのくらい、あなたは強烈な人だったから。