嘘と植物

瘋癲さんが家に来た。

 

この間、瘋癲さんに会った時間が嬉しくて、楽しくて、また会いたくなったので、私から誘った。

 

瘋癲さんは私の家までの道のりを記憶する気が全く無い。

私が迎えに来ると信じ込んでいるからだ。

 

一緒に買い物をして、帰った。

瘋癲さんが食べたいものを買い、料理は私が作った。

 

瘋癲さんは、くつろいでいて、楽しそうだった。

「ここは快適でいいなあ」

と言った。

 

家が快適なのは、私が快適だからよ。

 

今そう思う。そのときは只嬉しくて、思いつかなかった。

 

僕は15万の月給しかない男だから

と何度も言っていた。

でも私、知ってる。

私、月給18万だったとき、

家賃は3万9千で、それでも貯金を毎月3万積み立てしながら暮らしてたことがあるし、

元旦那さんは表現者だったので、もっと少ないお金で生活しなくちゃいけないこともあった。

 

カフェなんて、入れなかった。コンビニでものを買うなんて、できなかった。

 

1円でも安いところを探して、8円、10円、30円と切りつめて生活した。

瘋癲さんは7万5千の物件に住み、諸経費を沢山かけている。

パソコンサービスや、呆れるけど出会い系サイトとか。

そして毎朝カフェで朝食を食べ、コンビニで水やお茶やお酒を買っている。

電気や水も全く節約するつもりが無いし、とにかく大量に文房具やなにやら、すぐに買う。

貯金が無いと前から言っていたので、それが本当だとしたら、

どこかから、毎月送金がある筈だ。

多分8万から10万の送金だと思う。

別れた女性か、パトロン的な女性がいるのかも知れない。

 

15万って聞くたびに、どうして嘘をつくのかな、と思う。

そういうところは、なんだか小ずるくて、嫌いだ。

 

瘋癲さんにとって、好きって、どういうこと

って聞いたけど、心臓がドキドキする人とかなんとか言うだけで、

面倒臭がって取り合ってもらえなかった。

 

明日友達と会うけど、くる?って聞いたら、

女って複数になるとすぐ結婚とか言い出して、面倒くさいじゃない

と拒否のオーラを全開にした。

 

うちの植物を褒めるので、切って、包んで渡した。

私が育てたものが瘋癲さんの家に入る。

嬉しいことだ。

でも、彼はすぐ駄目にしてしまう気がする。

植物が瀕死の状態になっているのを見つけたら、持って帰ろう。

 

私のことは、好きですか。

都合が良くて、セックスができて、面白いだけですか。

そう考えると、本当に胸が苦しくなる。

 

ネットで「都合の良い女」を検索すると、

まさしく私のしていることが羅列されている。

 

 

まあ、仕方無いや。

私が別の探しをするって知ったらどう思うんだろう。

まあ、なんとも思わないんだろうな。

 

仕方無いや。

私をまるごと、未来まで愛してくれる人が、みつかると、いいなー。

恐いくらい、幸せになりたい。

こんなことが起きるんだ、今までがんばってきて良かった、って、泣きたい。

そんな相手をみつけたい。