副業としての、妻

瘋癲さんと、1ヶ月会っていない。

 

翻訳の締め切りが何ヵ月後かにあって、時間が無いそうだ。

 

瘋癲さんの頭の中は、集中に入るとずっと繋がっているから、私と会うことで調子が狂うのだと思う。

 

と、自分で自分に言い聞かせている。

 

電話をしても、すぐ切られてしまう。

出たときの早口な声でわかる。

あ、仕事中だ。

悪いなと思って私からも切る。

 

でも、ちょっと用事があったとしても、それを話そうとすると

「ああ、今ちょっと準備中だから、ごめん」

と切られてしまう。

 

だから電話もかけなくなった。

1ヶ月会わない間に、寂しくて、寂しくて、

そして、慣れてきた。

 

で、考えた。

 

わたし、このままで、いいのだろうか?

 

そんなときに、非常に美しい、あるお客様がいらした。

職業が、お金のかかる芸事だった。

 

彼女が芸事を続けるためには、かなり潤沢な資金が必要であって、

どうしても必要であって、

彼女の芸事から得られるお金だけでは、絶対に足りなくて、

また、足りるための努力は、彼女にはしきれなくて、

で、お見合いでもって、高所得の男性と結婚したのだった。

 

彼が単身赴任になって、平穏になった。

夫が戻ってきたら、どうしようと言っている。

他の男性と付き合って、心のバランスを取っている。

 

その話をたんたんと聞きながら、面白く思った。

それって、完璧に副業。

妻という職業。

本業のための、副業。

 

この考えは面白い。

副業先という選び方で男性を選んだら、

どうだろうと思った。

 

ちなみにうちには、結婚相談所の女性社長も来る。

彼女の話を聞いていると、家庭はときめきより、徹底した安楽が先だということもうなづける。

 

1ヶ月ひとりでいて、本当に寂しかった。

安楽が欲しかった。

こんな付き合い方では、私の精神状態が、無理かも知れない。

 

そして、瘋癲さんは、

ここが一番悲しいところだけど、

私が嘘をつこうと結婚しようと二股かけようと、絶対に追求してこない人だ。

多分、どうでも良い人だ。

彼はいかなる場合でも、自分個人の自分勝手は貫くけれど、

例えば彼の締め切り前に私が入院したら、絶対に来ない人だけど、

人に何かを強いることは無い人なんだ。

 

何週間か前、瘋癲さんを音楽会に誘った。

もちろん断られたので、他の人と行った。

「例のお友達と行ったの?」

とメールが来た。

「他の友達と行きました」

と返信した。

その先は聞いてこない。

その友達は誰なのか、男か女かも聞いてこない。

 

もっと言えば、その質問に答えなければ、

彼は「この質問にあなたは答えなかった」という回答を持って、

それで終わってしまう。そして忘れてしまう。

 

そんな人だから、私が何をしていようとも、彼はどうでもよくて、

私が生きて連絡を絶っても、死んで連絡を絶っても同じ。

そういう人なのだ。

 

父が事故にあって、色々考えるようになった。

 

仕事として、パートナーになれる人を探す・・・

月会費をかけて、探す・・・

 

どうかなあ・・・・

 

ああ嫌だ、どうしていつも、自分のしたいことがわからないんだろう。

おやすみなさい。