擬似入院
サロンの予約が無かったので、瘋癲さんがトリートメントを受けに来た。
部屋にはよく陽が入って、平和で、
瘋癲さんは開始3分で冗談みたいに寝入ってしまった。
仰向けになって、また冗談みたいに速やかに寝入っていた。
終わってから、
枕をちょうだい。あと5分このまま寝させて
と言って暫く話をした。
瘋癲さんが大きな枕に豊かなもじゃもじゃの頭をゆったりと乗せて、
白いシーツの中にいて。
私がベッドに腰掛けて。
まるで入院だな
と瘋癲さんが何度も言った。
静かで、光線が優しくて、私達は、おだやかで。
理想の楽園みたいだった。
瘋癲さんもきっと連想したと思う。
こうして女に見守られて入院するのも悪くないなって。
彼はすぐに忘れちゃうんだろうけど、
私は、忘れないと思う。
あの時間が、画像として記憶に焼きついてます。
秋の午後。
綺麗だったから。
おやすみなさい。
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