君は、美味しいんだよ

目線を落として君は言った。

誰と会っていたの

やっと、聞けたね。

でも、僕が歌うように

さあ、誰だろうな

と言って、

そのまま楽しそうにしていれば

君は可愛そうに、黙ったままなんだ。

いいからおいで

と言えば隣にやってきて

そこで体中をゆっくり撫でてあげれば、君の身体のこわばりは取れて

あとは諦めと推測が摩擦して、置き火のように残るだけ。

悲しみが嗚咽のように君を刺激しているのがわかる。

呼吸がときどき、詰まっているからね

でもさ、もう少しやさしく撫でていれば、それも収まっちゃうんだ。

ほら、安心してきた。良かったね、今日も何事も無くて。

抑圧を徹底している人を操るのは簡単だ。

君はそれに、自己肯定感も枯渇寸前だ。

この二つが揃っちゃってる人は、絶対に暴れない。

一番好きに扱える。

面白くはないけどね。

ああ、本当に君は、残念だ。

いい子なのにね。

人形みたいなんだ、怒ることも、泣くこともできない。

かましい女どもに知恵を吹き込まれると、

色々質問を抱えて持ってくる。

裁判官の隣にいる、使えない秘書みたいに。

でも僕がやさしい目線で君に伝えるだけで

(答えたく、ないな)

君はまた、黙って帰っていく。

君はもう少し自分の意思を持たなくちゃ。

かわるがわる、食べられちゃうだけだよ。

綺麗なのに、残念だな。

君は美味しいんだ、本当に美味しい。

だから僕でもときどき、凶暴になりたくなる、ならないけどね。

僕はもう君を見送ったりしない。

勝手に寝ていれば、勝手に帰っていく。

僕を起こさないように身支度をしている静かな音がする。

最後にもう一度やりたければ

おいで

と言えば君は来ちゃうんだ。

それじゃ駄目だよ、わかるかな。

それじゃ人形と同じじゃないか。

君は美味しいけど、美味しいだけなんだ。

果物みたいだ、食べつくされたら、

可愛そうに、君は捨てられるだけなんだよ。

でも君はきっと黙って消えてくれる。

悲しそうな顔で、うなづいてくれるんだ、そうだよね。



どうしてだろうな、きっと君のような子は、

神様の言うことにだって、いつも忠実だろうに、

背いたことなんて、ないんだろうに。


そのうち、いい人が見つかるといいね、君はいい子だから。

そう、お婆ちゃんにならないうちに。

それとも、神様にとっても

君は、ただの美味しいものなのかも知れない。