人はなんで生きるか
誰の体にも特徴があって、これまでの積み重ねがあって、暮らしや性格や考え方がある。
沢山の人に触っているうちに、色々な体の傾向や分類もなんとなく出来てくる。
一人一人が面白い。本当は毎日「こんな方がいらした!」って書きたい。
書いちゃいけないかも知れないけど、先日いらしたお客様の話。
お嬢さんと一緒に来店した初老の女性。お母さんとおばあさんの間のような、お母さん。やつれた控えめな笑顔。
その方が、何を言っても「ありがとうございまーす、しゅみましぇーん」と手を合わさんばかりに有り難がる。
こちらへどうぞ・ハンガーをお使いになって荷物はこちらに入れてください・うつぶせになってください、そんなことにも手を合わさんばかりに「はー、ありがとうございまーす、しゅみましぇーん」と返してくるので、この方はちょっと変わってるのかな、何かあって、卑屈になっちゃったのかな、と妙な気持ちになった。
仰向けで首を施術しているとき、「こんなに気持ちよく良くして頂いてえ、私は言葉を聞いたらわかると思いますが、ここの人間ではありません」
とその女性が話し始めた。今や日本で知らない人はいない、何度も何度も土地名を連呼され印字された、福島県の海沿いの町の方だった。
民主党は何もしないと言われていますが、そんなことはありません。仮設住宅もどんどん建っています。知らない土地から未だに色々な方が来て一生懸命助けてくれる、日本は素晴らしい国です。本当に有り難いことです。
何を失ったのか、全部流されてしまったのか、ご家族は無事だったのか、家はどうなったのか。
大変でしたねとか、頑張って下さいとか、未来は云々とか、そんな言葉はとても使えなかった。
着替えを終えて部屋から出てきたその方が抱きつかんばかりに私の手を取って
「お茶でもゆっくり飲んでえ」と言った。まだ仕事だってば!と心の中で苦笑した。
お2人が帰られて片付けに部屋に入ったら、タオルの上に畳んだ1000円が2枚置いてあった。
文字通りぶったまげて、その方を追いかけた。エレベーターでは間に合わないので非常階段から身を乗り出したら、お2人が笑いながら歩いてゆく後姿が小さくなっていった。
一発大声を出して呼んでみたけど、届かなかった。
今でも繰り返し読んでいる、トルストイの民話が重なりました。
(また長くなるから、ここでは詳しく書かないけど)
〆の一行を書くと白々しく偽善めいてしまうので書きにくい。
高額なチップをありがとうございました。
私は、元気です。
あなたも、もっと元気になりますように。
明日が今日よりも、良い日でありますように。