子供との距離
友達の家に行った。駅で待ち合わせした。
彼女が押しているベビーカーの中の赤ちゃんが、上目使いでこっちを見た。
彼女の家に入ると、床に下ろされたその子がまたたきも忘れたように警戒している。
何をするにも顔だけは私を見ている。道で会った猫みたいだ。
友達と話しながら、体を動かさないようにして、奴にアイコンタクトを送っているうちに、目があっても身構えなくなった。
指を差し出してみた。まだ握って来ない。
そのうち、ぺたぺた這いながら少しずつ近づいて来た。
頭のテッペンの髪の毛を、指先でほわほわしてやった。
床に座っている私のまわりで作業するようになった。
至近距離に入ったぞ。餌付け成功だ。
我慢できなくて後ろからヒョイと抱き上げてあやしてみた。
いきなり自分の体が宙に浮いたショックで、そいつは脅えて固まってしまった。
失敗した。時期尚早だった。
そんなことを12時から16時まで、ずっとやっていたが、
ついに奴を抱けないまま、帰宅時間になった。
奴は私の存在をなじませられず、
昼寝の時間になっても私から目を離さず、
授乳されていても私を凝視しているため当然眠れず、
そこから生じてくるもろもろの体調不良を自分で解決することもできず、
色々とお疲れの様子であった。
お馬鹿さん。動物そのものだな。
次回は慣れてみせようぞ、そなたを抱っこして、そして
大きく空に放ってみせるとも。