改札を出たら深呼吸を
とてもまじめなお客様の施術をした。
脱力の苦手な方。体全体が張り詰めていて、固い。
うつぶせになっても、ずっと指先を動かしている。頭の中で常に考えて続けている人だ。
仰向けで首の施術をしているとき、その方が口を開いた。
−言いにくいとは思うけど、教えて欲しい。自分みたいなタイプの体は客として扱いにくい体ですか?
実際、全然そんなことは無かった。
饒舌ですぐ感想を伝えてくる無邪気でしなやかな体とは違うけれど、
その人の体はその人なりに、私の手と、通じた。
例えて言うなら、言葉で交流するのではなく、小さな音の打楽器で交流してゆくような。
だからそのように伝えた。とても安心されたようだった。
生活の中で、もう少し体が緩んでゆくよう、いくつか提案してみた。
そうか、そうか。その人は頭を私の両手に任せ目を閉じたまま頷いた。
終わった後、その方の表情を見て、良いセッションだったな、と思わずにはいられなかった。
まじめな方、私も同じです、私の体は、あなたの体とそっくりです。
お互い、自分の体に、少しずつ目をむけてあげたいですね、
気持ち良いことを気持ち良いと、体で、感じられるように。
今日は桜が綺麗です、あなたの駅の改札を出たら、空を見上げてください。
明日はお休みだそうで、良かった、是非体を休めてください。
寝ているときにもどこかに力が入ってないか、探ってみてください。あなたは必ずどこか頑張って寝ています。わたしもそうですから。
脱力した体はお布団の上でどんどん広がります。もっとだらしなくなってください、寝ているときくらいは。
そして機会がありましたら、またお会いしたいです。
お体、大切になさってくださいね。
私もがんばります。